取材当日、愛媛県の私の自宅と、かとうさんの出張先である池袋のホテルをZoomで繋ぎました。物理的な距離は600km以上離れていましたが、画面越しでもそのパワーが伝わってきました。かとうさんには自然と相手を笑顔にしてしまう力があり、取材中なのに私も画面越しで何度も大笑い……。取材後にマスカラが取れてました(笑)
タイトルにもありますが、かとうさんには「かとうっぽい人」を育てる、というビジョンがあります。四国の愛媛という、県の位置もあまり認識されていないような地方に住む私としては「かとうっぽい人」が全国各地にたくさん生まれて欲しい!と強く思いました。その方々が地域にコミットしてくださることで、アメーバ式に自走できるエリアが増え、日本全体が元気になっていくのではないかな…と。今後のかとうさんのご活動、そして地域商人の方々のご活動に期待大です!
今回はそんなかとうさんの、地域づくりに取り組むことになったきっかけや、サポートする地域の選び方、実際の取り組み事例や、今後のビジョンについて幅広くご紹介します。「かとうっぽい人」ってどんな人なのか!?がきっとわかるはず!
株式会社まちづくり観光デザインセンター
代表取締役社長
かとう けいこさん
イベントリーダープロフィール
1963年北海道足寄町生まれ。北星学園大学文学部社会福祉学科卒業後、リース会社の役員秘書、NHK札幌局、ビデオリサーチ北海道支社、北海道経済産業局消費者相談室、道新スポーツ発行ガーデニング新聞「花新聞ほっかいどう」創刊編集長、シーニックバイウェイ支援センター事務局長、2011年より現職。2019年時点で、北海道の179全自治体に滞在。基本は公共交通での移動。50泊以上しているマチが5つある。福井県以外の46都府県にも滞在歴あり。海外は40か国。現在関わっている自治体は、中頓別町、名寄市、登別市、新ひだか町、当別町、音威子府村、秋田県能代市。審議委員会委員や座長も4つほど務めている。
情報発信にはテクニックが必要!ライター業で見出したポイントを伝授
かとうさんが、地域を元気にする取り組みを始めたきっかけは何だったのでしょうか?
32歳のとき、ガーデニング新聞「花新聞ほっかいどう」の編集長をしていました。当時、編集業のかたわら、北海道から委任され、まちづくりと景観の専門家として北海道の鹿追町や清里町で花を使ったまちのデザインや、その維持に関わる人たちの教育にあたっていました。
その方々の普段の業務は花の水やりや花がら摘み、記録用の写真を撮ること。私は、その写真を町のホームページにアップすることを提案しました。いくら素晴らしい活動をしていても、配信しないと外部の人には伝わらない!と。また、マスコミが例えば美しい景観のまちの情報を探していたとしても、検索にすら引っかからない。更新頻度、撮影の仕方など、さまざまな角度から発信方法を指導しました。それが、私が最初に取り組んだ地域づくりですね。
その発信のノウハウは、どこで身につけられたんでしょう?
新聞社に入社する前に、インテリアやファッション、農業、移住、食テーマの東京発行の雑誌の北海道担当としてフリーライターをしていた時期があります。ライターは企画のネタが無いと仕事にならないので、口コミやインターネット検索で質の良い情報を探します。私も日々たくさんの情報を収集していたんですが、やっぱり「写真」って大事なんですよね。いくらモノが良くても、伝わるコンテンツが無いとだめなんだな、と身に沁みていて。また、情報発信にはテクニックが必要だと感じていました。PRプランナーの資格を取り、ニュースリリース、プレスリリースの書き方含め、広報の基礎をマスターしたのもこの頃です。
ネタが良く、それが伝わるものであれば、新聞などに掲載される。そうすると、テレビ番組でも取り上げられる……。そうして、取り組みや地域の素晴らしさが広く知られていきます。掲載されることによって、いつも外に出ていくことを良しとしない家族も認めてくれるなどの、副産物も。なので、私が持っているノウハウは、地域の方に惜しみなく伝えていましたね。
北海道中小企業家同友会産学官連携研究会(HoPE)2020年11月例会にて講演
地域づくりのゴールは「自走すること」
これまで、多くの地域づくりに携わられています。サポートする地域は、どのようにして選ばれているのでしょうか?
実は私、自分から営業したことが無いんです。ありがたいことに、周囲の方の口コミでお声がけいただいています。ただ、「良い仕事を長く続けたい」というポリシーがあり、引き受ける上ではいくつかのポイントを置いて選ばせていただいています。
例えば、既に大人気で、さらに人を呼びたい!という地域ではなく、まだ光が当たっていなくて、困っている地域であること。そして、私に声をかけて下さった担当者の方が、やる気があること、素直に話を聞いてチームで取り組んでいけること。行動力があり、少しの困難でもへこたれたりしない人であることが重要!また、私以外の専門家がサポートに入った方が良いだろうと思う地域であれば、別の方を推薦することもあります。やはり、相性も大切ですね。
地域づくりを成功させるための、ポイントはありますか?
以前、東京の大手広告代理店さんや旅行会社さんが入られる地域活性化プロジェクトに関わったことがあります。打ち上げ花火としてはさすがに一流でした。そこで感じたのは「地域づくりを継続していくには、地元の人がコミットしなければいけない」ということ。外部の方が入って、一時的に美しいものができたとしても、すぐに萎びてしまう。そうではなくて、中心メンバーとして地元の方が主体的に入り、それを若い人が受け継いでいく、そして自走していくことが大事だと思いますね。私の地域づくりは、いつも「自走すること」をゴールに置いています。
自走できるようになるということは、かとうけいこを「卒業」する時。つまり、私がその地域から離れることになるので、個人的にはとても寂しいんですけどね……。3年前に8年間通い続けた某広域エリアを卒業した時には、捨てられた女の気分になったこともあります(笑)でも、地域コンサルティングの先輩から言われました。「あなたの手を離れて歩いて行ける地域に、”ゼロ”から育てたかとうけいこの功績は、皆がわかっているよ。いつまでも、母性で付き合ってはいけないのよ。次の地域が、あなたを待っているのだから!」と。
今年で6年目になる中頓別町婚活事業「なかとん婚活」を支える現地スタッフの皆さん
街の若者に元気と自信を!現在は「婚活」で縁づくりも
地域づくりで、これまでで一番印象に残っている取り組みは何でしょうか?
北海道中頓別町との取り組みですね。9年間に亘り、関わらせていただいていています。
以前、北海道の移住促進事業で、天塩川沿いにある13の町に対してアドバイザー的なお仕事をしていました。その一つが、中頓別町だったんです。アドバイザーのお仕事が終わったとき、中頓別の当時の企画課長さんから「かとうさん、移住促進じゃない仕事もできるでしょう!このまちの婚活をお願いしたい。」と言われて……。婚活については知識も経験も無かったので即答でお断りしたんですが、「では、”若者を元気にする人づくり”の取り組みをお願いしたい!」と粘られ、結果的に引き受けることになりました。
それは、具体的にどのようなものだったんでしょう?
中頓別町青年交流委員会に所属している方を対象にした取り組みでした。メンバーは女性が2名、男性が8名くらいで、20代半ば〜30代半ば頃の若者でした。最初に全員に集まっていただいたんですが……。口下手な人や、挨拶ができないような人もいました。大人しくてシャイなんですよ。でも、そこで母性本能をくすぐられてしまって(笑)私がこの子たちを一人前にしなくては!とね。コミュニケーション能力などに関するワークショップや講演を繰り返すうちに、これまで暗い表情で参加していた若者の顔がキラキラしてきたんです!同時に、身なり、姿勢、態度も見違える程変化してきました。そこで、ちょっとハードルを与えてみようと宿題を出したんです。
どんなハードルだったんですか?
私は当時も今も北海道大学の大学院に通っていて、研究室には多くの留学生がいて交流がありました。その留学生たちを中頓別町でもてなす、2泊3日のツアーを若者がコーディネートするという宿題です。最初は何も言わずツアープランを提出してもらったんですが……。散々でしたね(笑)良かった点・悪かった点を一つずつ指摘して、少しだけヒントを伝えました。すると、1週間後には見違えるような素晴らしいプランが出来上がっていて!
実際にそのプランで6人の留学生たちを中頓別町に連れていくと、地元のロータリークラブをはじめ、街の人たちがサポートしてくれたんです。そして、その活動が広報や新聞に取材されたりして、若者たちの成長を街のみんなが知ることになります。それが、本人たちの自信にも繋がりましたね!そうやって、3年に亘り自分自身を磨いてもらい、同時に地域への誇りも醸成しました。
自走できる人づくりに成功されたんですね!今も、中頓別町に関わられているのでしょうか?
結局、「婚活」もやることにしたんですよ(笑)彼らが成長したので、素敵な女性たちを全国から集めるお手伝いも全力でやってます。今年で5回目を迎えました。コロナ禍ということもあり、2021年3月はオンラインで実施しました。男性はもちろん、全国各地からの参加女性とも私が事前に個人面談をします。Zoomで対面する時のリアクションの方法などもレクチャーしていますよ。中頓別町の婚活に興味のある人は、本当にみんないい子たちばかりで……。実際に、婚活を経てカップルになり結婚した若者、交際を継続している若者も3人います。婚活を進めるうちにコミュニケーション能力を身につけて自力で彼女を見つけ結婚した方も2人います。結果が出てきていますね。
青年交流事業としてインバウンドの受け入れも
▶︎【北海道】仕掛け人に聞く!「なかとん婚活」のカップル成立率が高い理由は?/Pretty Online地域商人メンバーで地域と本気で取り組みたい方には、ノウハウを伝授したい
かとうさんの、地域づくりにおける今後のビジョンはありますか?
地域づくりのお仕事はオーダーメイド。0→1の仕事ばかりです。効率は悪いと思いますが、それでもその取り組みで人が育ち、地域が自走して結果が出るから、面白くてやめられませんね(笑)
ただ、今後は地域づくりに携わる「人づくり」にも力を注ぎたなと思っています。辛くて忙しいけど、たまらなく楽しいと思える、「かとうっぽい動きをしたい方」がいたら、全てお伝えします。地域商人の仲間の三宅創太さんが「かとうけいこを100人作りたい」と2年前に、2度ほどおっしゃってくれました。その言葉は照れ臭かったけど、嬉しかったですね。
何をお伝えするかと言えば、例えば、地域づくりを進めるとき、その地域に入っていく作法、地元の方々の信頼を得るための極意。アイデアを出し合うときにアサインするメンバーの選び方、会議の設定方法などなど……。私がこれまでの経験で得たノウハウ、体感してきたことを、どんどん伝えたいと思っています。
かとうさんが考える「地域商人」における使命とは何でしょうか?
以前、地域商人の泉一也さんや林真人さんたちと奄美大島の地域課題を話し合うミーティングに参加しました。課題解決方法について参加者とブレストしていたとき、泉さんから突然話を振られたんです(笑)「かとうさん、奄美に参考になる北海道の事例ないかな?」と。ちょっと慌てましたが、数秒後にはいくつか具体的な提案をすることが出来ました。すると、泉さんに後で「かとうさん、あれや!」と褒められました(笑)そこで、ああ、ネタを出す瞬発力が身に付いている、それだけの引き出しができているんだなと自覚しました。
とはいえ、毎日早寝早起き5時間半睡眠で頑張っていますが(笑)いつまでも全力投球はできません……。なので、今後は「かとうっぽい人」を一人でも二人でも見つけて、その方々に「引き出し」を伝えていきたいなと思っています。そうして、それをどんどんリレーしていけたら嬉しいなと考えています。
登別でしかできないワーケーションの価値追求ミーティングメンバー