北海道から沖縄まで19名が参加!オンライン中継で秋田の郷土料理を作って食べる

5月27日夜、秋田県能代市の郷土料理「だまこ鍋」を全国の人がオンライン(Zoom)中継で調理し食べる「オンライン ローカル フードトリップ秋田編」が開催されました。このイベントは、事前に能代市で採れた食材を参加者に発送し、Zoomで作り方のレクチャーを配信しながらみんなで作り、一緒に食べ、同じ時間を共有するというもの。
オンラインで、みんなで「調理」!?そんなことできるのかな…と疑念を抱きつつ、Zoomでは「会議」しか経験のない筆者が、イベントの様子を取材してきました!

今回のイベントの流れ

  • 自己紹介チェックイン(15分)
  • 食材の確認(5分)
  • 調理タイム(40分)
  • オンライン会食タイム(15分)
  • デザートの麦まきの作り方レクチャー(15分)
  • 日本全国団欒トーク(15分)
  • 感想チェックアウト(15分)

コミュニティ店舗
「夢工房 咲く・咲く」経営
能登祐子さん

イベントリーダープロフィール

長野県佐久市生まれ。結婚を機に、秋田県能代市に移住。長らく専業主婦を経験したが、子どもの通う中学校で女性初のPTA会長に抜擢。その後、地元の自治会に女性の視点を取り入れるための女性部「すみれ会」を発足し、会長となる。2年後、女性初の自治会長となり、”地域のお困りごと”を解決するための地域活動をスタート。さまざまな取り組みを推進し、平成25年には内閣府男女共同参画局「女性のチャレンジ賞」を受賞。現在は、農家と街中を「食」でつなげるプロジェクト「ときめき工房・ねま〜る」を運営し、農業の6次産業化を目指す。

北海道から沖縄まで19名がオンラインで食卓を囲む

秋田県能代市の郷土料理「だまこ鍋」を、全国の参加者がZoom中継で一緒に調理し、一緒に食べるという今回のイベント。北海道、岩手、東京、大阪、高知、沖縄など各地から19名の参加者さんがオンラインで集合。みなさん、エプロンをして参加されています!そして、ファリシテーターは、コロナ禍になってから250回以上もオンラインイベントを主催してきたという奥祐斉さん(おくゆうさい、通称おっくん)です。

ちなみに「だまこ鍋」の「だまこ」とは、新米を潰して丸めたもののことを言うそう。秋田県といえば「きりたんぽ」が有名ですが、それを丸めたバージョン…というと分かりやすいでしょうか。秋田の方々は、新米ができるとこの「だまこ」をせっせと作り、県外に住む離れた家族に送るそうですよ。

郷土料理を学ぶ

うどんとビニール袋が入ってない!?ハプニングもご愛嬌

イベントの冒頭で、今回のお料理の”先生”である秋田県能代市の佐々木茂子さん(72)からご挨拶。とっても緊張されている茂子さん…「いま72歳だけど、今日は61歳のつもりで頑張ります!」というコメントでみんな笑顔に(笑)

次に、参加者に届けられた荷物の中身の確認。今回届いたのは、秋田で採れたお米2合、比内地鶏の鶏ガラスープ、白神ネギ、セリ、茂子さんが手作りした乾燥まいたけ、ごぼうです。また、デザートになる「麦巻き」の完成品と、おまけで「ごま巻」という郷土料理も。お鍋に必要な、鶏胸肉・油揚げ・糸蒟蒻は冷蔵が必要なため各自で用意です。

確認していくと…あれ!?締めのうどんが届いていない人が居る!!「だまこ」をこねるためのビニール袋も入ってない!?冒頭にまさかの事態が勃発ですが、このドタバタ感も味があっていいですね(笑)

ビニール袋はジップロックで代用するとして、早速調理に入ります。

ごはんは「はんごろし」!あとはお鍋に入れるだけ

まずは「だまこ」を作っていきます。事前に届いた秋田のお米を炊いておき、それを潰していく作業。茂子さん、ご飯を潰す時は「”はんごろし”で」と(笑)なんでも、つぶしすぎると、おじやみたいに形が崩れるそう。みなさん、それぞれ手元のお米を潰しながら、仕上がりを画面上で茂子さんにチェックしてもらいます。

調理しながらも、ファシリテーターおっくんが参加者のみなさんに話を振っていきます。普段の料理って、一人でもくもくとすることが多いけれど、他の人の様子を画面でチェックしながら、会話しながら料理するって、新しいし、楽しそう…!

「だまこ」ができたら、あとは同封されていた比内地鶏の鶏ガラスープをあたため、具材を投入し、煮込めば出来上がり!茂子さんが調理されている様子は、手元用カメラでばっちり映っていて、Zoomの画面を通してでも非常にわかりやすい。そして、簡単!あっという間に、秋田の郷土料理の完成です。

ここで、会食タイム。自分でつくった「だまこ鍋」を食べながら、みんなで感想の共有です。「お米の潰し方が甘かったみたい…」という反省コメントや「乾燥ごぼうとまいたけが、本当に美味しい」と秋田の食材への感動コメントも。

最後は、おまけで入っていた「麦巻き」の調理方法のレクチャータイム。麦巻きは、卵焼きのような見た目ですが、クレープみたいなお菓子で、秋田県では定番おやつとして食べられているそうです。プレーンとゴマ味の2種類が届いたそうですが、温めて食べるとまた一段を美味しいそうですよ〜(いいな…)

荷物を開けた瞬間に伝わる“愛情”

イベントの最後に、参加者さん一人ひとりから感想が寄せられました。

  • おばあちゃんと料理したときの思い出が蘇ってきた
  • コロナ禍で旅行に行けないけれど、今回は家族で参加してその気分を味わえた
  • 友達や家族、ご近所さんにシェアしたくなった
  • 久しぶりにちゃんと「料理」をして、幸せな気持ちになった
  • 秋田県能代市に行ってみたくなった
  • 全国の人と一緒に料理して、一緒に食べるという貴重な経験ができた

そして、みなさんが共通して感動したのは、実は「茂子さんから送られてきた荷物」でした。

  • 荷物を開けた瞬間に、愛情が伝わってきた
  • 人の思いがこもったものが届いて、嬉しさがこみあげてきた
  • 生産者さんから直接食材を送っていただくという、豊かな体験ができた

など、心温まる感想が。このイベントは、”荷物を開けたその瞬間”からスタートしている、そんな気がしました!

最後にイベントの感想を聞かれた茂子さん。「準備の時は、悩んで悩んでどん底に落ちましたが、今日はもう天にものぼる気持ちです!」と満面の笑顔。
最後は、秋田弁で「またね〜」を意味する「へばね〜」でお別れです。

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今後も、能代に「興味を持ってもらえる」イベントを継続したい

イベント後、リーダーの能登祐子さんにお話をお聞きしました。

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イベントを開催してみて、どうでしたか?

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能登さん

そうですね。うどんが発送されていないなどのミスはあったものの(笑)最後にみなさんがとても喜んでくださった事が、本当に嬉しかったです!全国のみなさんに能代を知ってもらい、みんなで心地よい時間を共有できた事が、一番の成果だったんじゃないかなと思っています。

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食材の発送に、とても苦労されたとか。

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能登さん

はい…「食材をいかに新鮮なまま届けるか」という事に、ものすごく神経を使いました。送料の関係もあり常温で送る必要があったので、野菜の鮮度が落ちないように、ペットボトルを凍らせ、「北羽新報(地元の新聞)」で包んだりして(笑)また、調理手順の順番に、食材に番号をふるなど、誰が受け取っても同様に理解してもらえるよう、茂子さんとたくさん考えました。

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たくさんの方の協力があって成功したイベントだったと聞いています。

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能登さん

そうなんです!地域商人のメンバーの皆さんだけでなく、能代市の地域おこし協力隊の方々や、大学生にも手伝ってもらいました。撮影機材は友人に貸してもらいましたし、本当に多くの人の手があって実現したイベントです。

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今後のイベントの構想はありますか?

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能登さん

今後も、能代市の食文化を継続して発信していきたいですね。イベントを通して、能代に「興味」を持っていただきたい。そうすると「関係人口」が増えていって、地域の活性化に少しでも繋がれば嬉しいと思っています。興味を持っていただけた方には、コロナが収束したら、能代にお越しいただけたらいいな…

編集後記

日本各地には美味しい食べ物がたくさんありますが、いまはコロナ禍ということもあり、気軽に味わうことができませんよね。でもそんなお料理を、全国の人たちとコミュニケーションを取りながら一緒に作って食べるってものすごく価値の高いことだなと思いました。

食材も、実際に現地のものが、現地の人の手で一つひとつ送られてくる。お母さんや、おばちゃんが荷物を送ってくれた時のような、あたたかさが感じられるのだろうと思いました。

発送に苦労されたり、抜けがあったりしたそうですが(笑)そのドタバタ感がとっても素敵だなと思いました。そういうのも含めて、楽しいイベントだったんじゃないか…と思います!(私も参加したかった…)

3歳、5歳の子育て中で、日々仕事と家事で疲れ、コロナでどこにも行けずストレスも溜まり…という生活をしているので、今回のようなイベントを通して、外の世界を疑似体験してみたいなと思いました。次回のイベントには、取材ではなくリアルで参加したいです!

(取材・文/三神早耶)
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